エンジニアとしての第一歩

言葉を覚える

大学院を卒業して、エンジニアとしての第一歩を歩み始めた頃に感じたことは「情報量が多い!」ということだったと思います。
まず、使われている言葉がわからず、関係する人間関係も一気に増えて人の名前と部署を覚えるだけで一苦労。仕事を進める上でのルールやプロセスも覚えなくてはいけなくて、日々大量の情報が入ってきて目が回る思いを感じていました。
(漫画「宇宙兄弟」の中で、消化器を口に突っ込まれているというような例えがありましたが、まさにそんな印象でした。)

最近、内田樹さんの「寝ながら学べる構造主義」という本を読んで、この時の苦労が当たり前のことだったんだなと腹に落ちたので書いておきます。本の中で、「言葉」や「単語」があって初めてものや概念などを表現できるという事が書かれていました。文化によって、ジャンルごとの「単語」の粒度が違っていて、その文化が大切にしている事ほど粒度が細かくなっているそうです。(例えば、日本には「四季」があるので、季節に関する単語がたくさんあるが、「四季」がない国では季節に関する単語は少ないなど)

会社に入ると、「会社独自の文化やプロセス」「社会人としてのルール」「業界独自の単語」など、今まで触れたことのない文化やルールに出会います。そこで使われている言葉や単語を覚えないと会社の中でやっていけないので、一気に言葉を覚えないといけないという事だったんだと思います。

私は転職を経験しましたが、新卒で入社した時に比べて覚える情報量が少なかったと思います。それは、「社会人としてのルール」や「エンジニアとしての仕事の進め方」というその業界の共通した文化やルールをそのまま使えたので、「その会社の文化やプロセス」という固有の部分の言葉だけを覚えれば良かったからだったんだと思います。

そう考えると、入社はじめに任された、「議事録書き」や「電話の応対」は面倒だけど無駄ではなかったんだと思います。仕事をする上で必要な「単語」や「名称」にできるだけ多く触れる事で、自分の中にその会社でやっていくための「言語プリセット」を早く作り上げる事ができるからです。新卒で会社に入って、「電話の応対を何でやらなくちゃいけないのか」と疑問に思っている人がいたら、自分の中の「単語帳」を充実させるつもりでやってみると少しは前向きに取り組めるのではないでしょうか。